スイスライフ

誕生日にあてた義父からの手紙

サリュー スイスリーベのフラウビショフです。この「サリュー」という挨拶は、義父が良く使っていた言葉です。

自分の誕生日に小さな計画が一つありました。それは、義父が私の誕生日にむけて昔書いてくれた手紙を読み返してみることでした。

先日の私の誕生日に、2012年に書かれたその手紙を計画通りに読み返してみました。手紙をもらった当時の私のドイツ語読解力では、消化できていない状態で、内容をぼんやりとしかつかんでいない感じだったのです。

私のドイツ語は、まだまだ道半ばにも至っておらず、日々精進するべきレベルですが(それがまた、難しい 汗)、手紙をもらった2012年当時よりは今回理解できた気がします。

義父の印象で、一生頭から離れない姿は、サイクリング姿でパトカーのおもちゃが固定されているヘルメットをかぶって満面の笑顔をみせているものです。

ビショフ長男の結婚式の日に、皆で自転車で集合して式を挙げる山の教会までサイクリングをするという一幕があったのです。

義父は、張り切って皆が安全に走れるように自転車パレードを先導する白バイ役をかってでたわけです。

たくみな自転車さばきで、一行の脇を行ったり来たりして、隊列を整えたりしています。

ヘルメットのパトカーを時々スイッチをオンにして、青いランプをチカチカさせ、サイレンを鳴らし、皆を笑わせます。

そんなお茶目な一面もありながら、義父は眼科医で、非常に教養の高い、またとてもアクティブな人でした。

若い頃医学を志し、交換留学でフィレンツェで過ごした経験があります。眼科クリニックを開業し、休暇には従兄弟たちとギリシャでセーリングを楽しんだそうです。

日本人の、しかもほんとうに普通の家庭に育ったフラウビショフからすると 「わおっ!すごい。」なのですが、

少し冷静になって、地理的要素を含めて考えてみると、スイス人からすれば、東京大学から京都大学、あるいは北京大学でいくつかのセメスターをとってみる。大阪に住んでいて、沖縄にダイビングにいくようなことなのかもしれません。

そう想像してみても、まだすごいと思わずにはいられませんが。

義父の思い出話をした時に、ヘアビショフや義母、ヘアビショフの兄や姉から、あんなこと、こんなことという義父の逸話を聞いて、私の義父の物語のページを増やして、楽しんでいます。

義父の手紙は、先ずかなり彼独特のお誕生日のお祝いの言葉で始まります。

「子供たちや美しい女性たちは、経験からしてつねに、お祝いの前から楽しみにし、お祝いの当日も喜ばしく過ごすものなので、私は今日、もう誕生日が来るなと考えたのです。」

二日早く書いていることを、義父の独特な表現で述べたのでしょう。

義父は、毎日禅の瞑想を実践していました。この手紙は、義父が座禅会に参加し、家に戻って、すぐに書いたようです。

この座禅会は、最も厳しい摂心の会より、期間は短いもので、簡素化されたものだそうです。摂心は一週間の最も厳しい瞑想スタイルで、毎日少なくとも8時間座禅するそうです。

座禅会は、それでも一日7時間半、量的、技術的には摂心ほど厳しくはない修行を積むもので、初心者、まだあまり鍛錬していない人、シニア向けのものです。義父は、38名の参加者のなかで2番目の年長者と大差で最年長だったそうです。

若い禅の先生が身体技法とともに身体瞑想を基本のプログラムに追加し、毎日みっちり1時間硬い床の上で立禅を修練したとあります。

瞑想に身体を使うことは、目標である自分自身が全体となり一体となることに、一歩近づく実践であり、それがひいては仲間と、さらには全ての生きとし生けるものが一体となる、ついには全ての創造物が一体となることに至ると書かれています。

「これは釈迦牟尼の決定的な体験、つまりブッダの悟りのことです。なんと2600年前!」

日本人の義理の娘なら、共通の話題に違いないと義父は想像したのでしょうか。焦ります。

手紙は、もう一度誕生日の祝いの言葉と、私が家族の一員になって家族皆が喜んでおり、家族は皆、私のことが好きで、私もそのように家族の皆を好きになってくれていることを願っている、ヘアビショフとともに沢山のそして深く心底からの幸せを願って、と締めくくられています。

この双眼鏡は、お義父さんの愛用していたスワロフスキーのもの。私たちと一緒に、旅行やコンサートで今も活躍中です。

さて、お義父さん、手紙を読み返したことで、誕生日を楽しく祝うことができました。どうもありがとう。

ヘアビショフに、アマトリチャーナをリクエストして作ってもらい、小さな果物のトルテでも祝いました。お義父さんも、天国でお元気で!

読んで頂きまして、ありがとうございます。

 

ABOUT ME
frau Bischoff
スイス人と結婚してfrau Bischoffにはなったものの、ドイツ語習得の道は長そうだし、スイスのことも日本のことも何故こんなに知らないの?と思う日々。育犬も落ち着き、発信することで学んでいけたらというのは甘いかな?ヘアビショフと愛犬のマックスとTeam Bischoffです。

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