グリュエッツィ!スイスリーベのフラウビショフです。
今回も独りよがり全開、いい加減気が付くの遅すぎませんという感想を持たれて当然のことを書いてしまいます。
チューリッヒの日刊紙ターゲスアンツァイガーには、木曜日にチューリチップ『ZÜRITIPP』という別冊がついてきます。手短に言えば、別冊名のとおりでチューリッヒお薦めエンタメ情報満載紙。コンサート、映画、美術館、オペラ、バレエ、レストランなどの一週間のイベントが網羅されています。
その冊子中の子供向けのコーナーに、イベントを体験した子供のインタビューが載っていることに最近気付きました。
正確に表現すると、存在は知っていたのですが子無しの身だし、子供のコメントなど幼稚で読んでも勉強にならないなんて鼻をくくっていたのです。
ある回がレシピ本がテーマでした。レシピ好きなフラウビショフは何気にその記事を読んでみると、インタビューの受け答えが子供なのに自分より遥かにしっかりしている、ここから学ぶべきものがあるといきなり改心し、今では長さも短いしこれは勉強になると書き写すようになりました。
今回クラシックのCDの感想を語る9才が登場。プロコフィエフの『ペーターと狼』とサンサン―スの『動物の謝肉祭』の印象を語っていました。
ここからが、今回の一番言いたいことです。
書き写す作業の中で、ディテールに気付くことができます。
『ペーターと狼』のタイトルは、ドイツ語だと『Peter und der Wolf』です。音楽の授業で知った遠い記憶に残る作品です。有名な作品なので、コマーシャルや映画やドラマのBGMで聞いたことがありませんか。
最初は、ドイツ語だと日本語の “と” がundで “狼” はWolfね、と表面的に納得していたら再度でてきたドイツ語タイトルにガツンと来ました。
“『ペーターと狼』のお話は、” のような表現では “お話” が主語になります。タイトルの『ペーターと狼』の部分は、 “お話” を後ろから修飾する役割にかわっています。
具体的に、例えばvonという前置詞で接げる場合、vonの後ろには与格がきます。そのため von 『Peter und dem Wolf』になるんです。定冠詞derをdemと変化させなければならないのです。
日本語で慣れ親しんでいた書物であれ、芸術作品であれ、他の言語で作品タイトル名を知ったとき新しい印象が生まれます。
それ自体は知的好奇心がわくわくすることなのです。同時に私の心のどこかで作品タイトルは、たとえ異なる言語であっても唯一無二で不変のものと勝手に思っていたのです。
英語だったら、文章内のどこにでてきても『Peter and the Wolf』でしょう。
それがドイツ語ではそのタイトルが、格変化で定冠詞がderをdemに律儀に変えるなんてと、ドイツ語のキチキチさに改めて驚かされたのでした。
フラウビショフがWolfと冠詞を忘れて認識して、まだ十分にder Wolfだという意識も自分のなかに完全に出来上がっていなかったのでしょう。
こういったことは、ドイツ語で作文等をコツコツ練習していれば当の昔の気付いていたはずです。私のさぼりぶりをご披露する場となってしまいました。
もっとはやく気付こうよという声も聞こえてきそうですが、まあ、死ぬ前に気付けて良かったということにしておきます。
ちなみに、原題はロシア語。『ペーチャと狼』だそうです。かわいい響きです。言葉って面白過ぎる!
典型的なフラウビショフの逸話でした。
読んでいただいて、どうもありがとうございます。
写真は、狼ではなくライオンです。リヒテンシュティークの街角で撮影。狼の子孫、マックスは、貰い物のダウンジャケットを着て登場。リバーシブルだったりします。