もしかしたら、フラウビショフは、ドイツ語を愛し始めています。
Du bildest dir das nur ein.(それは君の思い込みにすぎない。)
さて、ドイツ語の動詞に、再帰動詞があります。読んで字のごとし再び帰ってくる動詞。再帰代名詞とのみ結びつき、一つのまとまった意味を表します。
ドイツ語では、Reflexive Verbenです。反射とか、自分が鏡に映って対面しているイメージです。
フラウビショフには、この再帰動詞と再帰代名詞が非常に難解でした。
英語では、I enjoy myself.(楽しんでます。)で再帰代名詞を勉強しませんでしたか。この英文は、私で始まり、動きは自分自身に帰ってきています。エンジョイしているのは、主語の私自身。
I enjoyed it.(それを楽しみました。)ならitは、何か別のことで、私ではありません。
このmyselfの類が、ドイツ語では、mir-mich-dir-dich-sich-uns-euchです。sichは再帰代名詞の原型です。
英語より複雑なところは、再帰動詞によって、使う代名詞が違うことです。与格の代名詞がくるのか、対格の代名詞がくるのかという問題です。
幸か不幸か、一人称(mir-mich)と親称の二人称単数(dir-dich)だけ再帰代名詞がことなり、あとの代名詞は、どちらの格も共通です。
最初に再帰動詞と再帰代名詞に出会った時、もうこれは私には使いこなせない。複雑すぎる。お手上げだあ。外国人だからってことで、間違って使っていこう、と開き直ってしまいました。
そんなに大きな間違いではないのではないか、こんな短い単語を落としたって伝わるだろうと変な決心をしたのでした。もしかしたら巷では、口語体として再帰代名詞を入れなくても普通なんてことないのかな、などと強引な発想をしたものでした。
ある時ドイツ人の友人に再帰動詞の文を再帰代名詞無しで言って、これってやっぱりおかしいの、と聞いてみたことがありました。答えは、やっぱりおかしい、とのことでした。
勉強していない期間のほうがだんぜん長いのですが、時々押し寄せるドイツ語勉強熱の波がきて、文法ドリルに取り組んでいました。そんな中、再帰動詞に再会しました。なんだか動詞の習得に、けっこうな頻度で登場してくるなあ、もう無視はできない、という状態が来たのです。
動詞は、他人あるいは物質か、主語自身か、または両方に作用するときがあります。
私は、動詞だから他人あるいは物質を動かすイメージを強く持ちすぎていたようです。
そして突然、再帰動詞で表現したいことは、主語の行為なんです。だから再帰動詞っていうのだという、当たり前の事実にやっと気が付いたのです。
また、言語とは主語自体が動詞の作用を受ける場合が非常に多いことを再認識しました。
主語の行為が自身に反射している時、鏡に映っている再帰代名詞なしにはドイツ語の文として完成しない、と腑におちたのでした。
勝手で乱暴な説明かもしれませんが、I enjoyed it.もドイツ語なら、I enjoyed myself it.ってなる感じなんです。
習い始めにIch freue mich auf die Ferien.(休暇を楽しみにしています。)、Ich beeile mich.(急いでいます。)がでてきました。「なんだろう、このmich。」その頃は、再帰動詞と意識することもできませんでした。単純に使用頻度が高いので丸暗記していました。
日本語だと、人を登場させなくても通じてしまいます。しかし、ドイツ語では主語と再帰代名詞で2回も登場させるのでした。
今の私の目には、動詞を挟んで美しい均整がとれたドイツ文に映ります。
再帰動詞と再帰代名詞に対して態度をあらためると、ドイツ語の文章を読んでいて、sichがそこらじゅうにあることに気付きました。少しドイツ語との距離が縮まったのでしょう、と思いたいフラウビショフです。
なんと文法ドリルの巻末には、代表的な再帰動詞のリストが掲載されているではありませんか。
気付くの、遅いよ~フラウビショフ!あくびのでてしまうようなお話でしたか。
読んでいただいてありがとうございます。